「無意味むいみ」－ヌンさん

人間にんげんの人生じんせいとは、悲劇ひげきである。
それは大人おとなになってから、理解りかいしたくなくても理解りかいしてしまったことだ。毎晩まいばん、このような道徳的どうとくてきな思想しそうのせいか、生いきる意味いみを探さがし続つづけ、気きづかないまま一秒いちびょうたりとも寝ねずに過すごす夜よるが日ひに日ひに増ふえてくる。「教育きょういくでは大切たいせつなことほど教おしえてもらわなかったし、それが山やまほどある」という当あたり前まえの事実じじつを前まえに、自分じぶんが選択せんたくした生いき方かたが最初さいしょから間違まちがっていた可能性かのうせいに悩なやまされている。結局私けっきょくわたしは、この灰色はいいろな世界せかいの中なかで、幸しあわせになるために生いきていたのか。そもそも、「幸しあわせ」を感かんじる方法ほうほうなど、教育きょういくの中なかでは教おしえてもらわなかった。
人種じんしゅにかかわらず、教育きょういくをとおして「幸しあわせ」の意味いみさえ教おしえてもらわなかった子供こどもは、大人おとなになって、形式的けいしきてきに結婚けっこんして、「幸しあわせ」を分わからないまま家庭かていを築きずく。「幸しあわせ」を分わからないままでは、幸しあわせに対たいする「ありがたみ」など分わからなくなるだろう。ありがたみを知しらなければ、産うんだ子供こどもの命いのちがもたらす幸しあわせとその「ありがたみ」など理解りかいできるか、疑問ぎもんに思おもう。子供こどもはともかく、猫一匹ねこいっぴきにも命いのちがあるということさえ理解りかいできないのではないだろうか。そのような大人おとなは、「幸しあわせ」についての考かんがえ方かたを、子供こどもに教おしえられるのだろうか。
結局けっきょく、「幸しあわせ」の意味いみを知しらないまま結婚けっこんしてしまった大人おとなは、何なんのために婚約指輪こんやくゆびわを購入こうにゅうしたのだろう。その指輪ゆびわで他人たにんに自分じぶんの「幸しあわせ」を見みせびらかして、他人たにんの嫉妬しっとに舞まい踊おどるためなのであろうか。そんなふうに生いきて人生じんせいを楽たのしむのは、乗用馬じょうようばの人生じんせいよりも、よっほど醜みにくい。

（終おわり）