京アニ〜聖地巡礼から見る京都〜 孫ユジンさん
京アニ〜聖地巡礼から見る京都〜 孫ユジン
CONTENTS
Prologue.
- 自己紹介 & アニメーション……日本との繋がり
- 『たまこまーけっと』……出町柳・ふたば・鴨川デルタ
- 『響け!ユーフォニアム』……京阪宇治駅・京都コンサートホール・宇治橋・朝霧橋・宇治神社・宇治上神社・JR宇治駅
- 『けいおん!』……京都駅・三条MOVIX・三条JEUGIA・金閣寺・北野天満宮
- 『Free!』 ……鳥取県岩美町・鳥取駅・鳥取砂丘・岩美駅・浦富海水浴場・荒砂神社
参考資料
自己紹介
現在、同志社大学社会学部メディア学科に在学中。
日本に来たのは2018年の3月で、京都は初めての訪問だった。
京都アニメーションのアニメ作品『Free!』が好きで日本語の勉強を始めた。
アニメーション、日本との繋がり
私が初めてアニメーションを見たのは結構昔で、2001年に公開されたアメリカのある映画だった。それ以来ずっとディズニーやドリームワークスの作品を見ながらアニメーションへの関心が深くなった。中学3年生の時、友達から勧められた日本のアニメを見てからそれにはまって、日本語の勉強を始めた。その後、外国語高校に入学して、副専攻として日本語を学び続け、留学も決めた。こんなに些細な趣味一つがこれほど人生に影響を与えるとは思わなかった。でも、今まで趣味があったから疲れずに楽しみながら過ごすことができたと思う。
旅行として神奈川と東京、千葉に行ったことはあるが、関西は留学する前に来たことがなかった。好きなアニメーション会社、京都アニメーションがある所という点だけですごく期待していた。知らなかったからこそ楽しめることもたくさんあった。京都の観光地や、住んでいる場所の周りを歩きながら新しい気持ちで生活している。それで京都の魅力を人に知らせるために、「聖地巡礼」という形で紹介してみたいと思った。
京都アニメーションのある作品は私に日本語を勉強するきっかけになってくれた。そのため日本への留学を決めたと言っても過言ではないほど、意味深い作品だった。好きなメディア媒体から出てくるのを見たことで「いつか行ってみたい」と思われる場所にファンが実際に行って写真を撮って作品で描写されたシーンと比較したり、キャラクターのコスプレをして楽しんだりする現象を「聖地巡礼」という。聖地巡礼は観光・経済的な面にも影響を与えている。聖地という意味を付けることで文化的な面のソフトパワーを上げることができるし、衰退した地域の復興を手助けするまちづくり・まちおこしにも繋がる。
京都アニメーションのアニメーション作品『Free!』は鳥取県の岩美町を舞台としていて、観光協会とのコラボレーションも行っている。このように、聖地巡礼は地域の活性化と発展をもたらして作品を利用した新しい形の観光広報ができるようにした。ファンにとっては自分の好きな作品への愛情を表現できるし、観光を楽しめる。また、マーケティングとしてもその地域にしか売っていないグッズとかキャンペーンも行く目的となる。聖地巡礼のために行ったが、その地域や町が好きになる可能性もある。このような面で聖地巡礼は地域にも、会社にも、消費者にもメリットになる文化だ。私自身も日本に来てから聖地巡礼のために鳥取県に旅行したり、京都に隠れていた聖地を見つけたりしながら色んな場所を訪ねた。
今年(2019年)の7月18日、京都アニメーションの第1スタジオで放火事件があった。夏休みになったら京アニショップを訪問するつもりだった私には大変な衝撃だった。いつかメディア製作関係の仕事がしたいと思っている私にとってその会社は憧れの対象であり、尊敬する創作者たちの働き場でもあった。この事件があってから自分でできることは何かないか考えてみた。国際漫画ミュージアムに設置されている募金箱に募金して帰る時、他にも京アニに感謝する気持ちを込めて何かやりたいと思った。ファンの一人としては彼らの作品を覚えて、これからも消費しながら応援することが最善の方法ではないか。そのため、私は京都にある京都アニメーションの聖地を回りながら自分の言葉で記録していきたいと思う。京都に住んでいる留学生としてもこの記録を通して観光客や、まだ京都に来たことのない人たちに作品とともに京都の色んな場所を知らせたいと思っている。
『たまこまーけっと』
京都アニメーションの制作によるテレビアニメ。2013年1月より3月まで全12話放送された。
私が初めて『たまこまーけっと』を見た時には舞台が京都だとは全く知らなかった。それにモデルとなった市場が大学のすぐ近くにあるなんて本当に驚いた。出町枡形商店街と呼ばれるこの場所は、主人公の北白川たまこが住んでいる所のモチーフになっている。上には『たまこまーけっと』の劇場版『たまこラブストーリー』のポスターも付いている。国旗や店もアニメのシーンと似ている。今はないけど、元々大きい魚の模型もあった。実際に訪れたのは3回ぐらい。スーパー、本屋、飲食店などが並んでいた。10月のある月曜日に行ったけど、市場は人がかなり多かった。その中でも一番混んでいたのは出町ふたば。
2019年10月に撮った出町枡形商店街の写真。上のオブジェは京都精華大学の学生が作ったらしい。
うさぎ山商店街のモデル、出町枡形商店街。平日だったが、人が意外に多かった。
出町ふたば
創業以来100年、和生菓子・赤飯などの専門店として、昔ながらの手法で作り続けているお店。看板は豆餅( 『京都グルメマップ』より)
主人公のたまこの家族は「たまや」というお店を経営している。そのモデルとなった餅屋が「出町ふたば」だ。ふたばは有名でいつも人が多くて、なかなか行けなかった。この日も混んでいたが、普段よりは列が短くて運よく豆餅が買えた。一つ200円で、思ったよりちょっと高かったけど、200円もするだけあって美味しかった。一度訪れてみるに値する所だ。商店街を出たら、たまこと鳥のデラ・モチマッヅィの姿をしている飛び出し坊やを見つけた。韓国では見られない物だったので、興味深かった。このような日常の物とキャラクターを組み合わせるなんてアイディアがいいなと思った。商店街のあちこちに『たまこまーけっと』のキャラクターなどが隠されていた。すでにそれはこの場所の一部になっていて、知らなくてもいいけど知ればもっと楽しめる、一つの文化になっていた。
商店街の外で出会った『たまこまーけっと』キャラクターの飛び出し坊や。
餅を買ってから次の聖地、鴨川デルタに歩いて行った。時々雨が降る、曇っている日だった。出町商店街から鴨川までは歩いて4、5分ぐらい。ここでは川で遊んでいる子供たちやサークル活動をしている学生をよく見かける。私も散歩に何度か行った所だけど、このアニメーションの舞台となったという事実を知ったのは最近のことだ。
たまこともち蔵が立っていた石橋が鴨川デルタだと聞いてからそのシーンを探してみたらすごく見慣れた光景だったので不思議な気持ちになった。聖地巡礼として訪ねるのはまた新しい感じだった。石橋の写真を撮った後、近くの階段に座って豆餅を食べた。2年間住んでいた町なのに、まるで観光客になったようだった。
たまこの幼なじみ、大路もち蔵が豆餅を持っているあるシーン。彼は「たまや」の向こう側にある餅屋の息子だ。ライバル関係だけど、彼女に片思いしている。
自分で撮った鴨川デルタの写真。雨が降った後だったので水の勢いが強かった。劇場版『たまこラブストーリー』のあるシーンとできるだけ似たような角度から撮ろうとしたが失敗した。アニメに登場する形式はちょうど反対側の川岸からの景色だった。
『たまこまーけっと』を見ていた時にはまだ留学も考えていない時期だった。だったのに京都に来て、住んでいる所の近くに聖地があるなんて、何かの運命を感じた。京都アニメーションが好きで京都への留学を決めたやりがいもあった。
慣れると見えないものがある。現地の人より観光客がその場所を詳しく知っている場合がよくある。彼らにとって旅先は短い時間でしか見ることができない場所であるため、事前に調べて、期待にときめく心でいくことになる。今回の聖地巡礼は私にとってそういう感じだった。これからもどこへ行ってもそういう期待感を持って新しい気持ちでいたい。
これを機に出町柳という場所と知り会えた気がする。京都にいる4年のうちに色んな場所を旅行しながら楽しんでいきたい。
☀ まだ『たまこまーけっと』を見ていない人はアニメ観賞の上、出町柳に行くことをお勧めする。聖地巡礼をきっかけに出町柳が特別な所になるかもしれない。
『響け!ユーフォニアム』
武田綾乃による小説シリーズ。京都アニメーションによってテレビアニメ化された。2015年4月より6月まで第1期、2016年10月より12月まで第2期が放送された。
小学生と中学生の時、オーケストラでバイオリンを演奏したことがある。『響け!ユーフォニアム』はあの時を思い出させた。日本はみんな部活を非常に重要視しているような気がする。アニメの中にも部活を扱った作品がよく見られる。今まで見ていた部活のアニメは主にスポーツ系で、その他にもバンドとかの軽音楽部の話はよくあったが、オーケストラは初めて見た。『響け!ユーフォニアム』も京都を背景としていて、主人公の黄前久美子が通っている学校は「北宇治高校」、つまり宇治市が主な舞台になっている。アニメを見ながら最初に気づいた所は京都コンサートホール。時々京都市国際交流会館が留学生向けのオーケストラ演奏会をやっていて、応募したら無料でチケットを送ってくれる。そのため、友達と何回か訪ねたことのある場所だった。
最後のエピソードで大会が行われた場所として登場する京都コンサートホール。
この写真は演奏会が終わった後で撮った夏の京都コンサートホールの風景。内部は撮影禁止だが、アニメで描写されている姿はそっくり。地下鉄烏丸線に乗って北山駅に降りると近くに京都コンサートホールがある。アニメのシーンに表現されている建物の姿が実際のものとすごく似ていて、見てすぐわかった。
第1話で登場した宇治神社。シーンの鳥居は台風によって被害に遭ったらしい。写真は奥にある鳥居。
ほとんどの聖地は宇治市にあった。宇治は京アニショップに行った時を除いて初めての訪問だった。京都駅でJR奈良線に乗って、宇治駅で降りた。寒い日だったが、意外に観光客が多くて驚いた。1期の背景は春から夏で桜が咲いていたけど11月に行ったため、代わりに紅葉を見てきた。今回はアニメを見てから聖地巡礼の目的で初めて行った観光だったので、聖地を中心に行く場所を決めた。『響け!ユーフォニアム』のロケ地と観光地が結構重なっていたみたいで、観光客たちの間に自然に入り込んで写真を撮った。同じ場所を訪ねても、それぞれ目的が違うということが改めて気づかされて面白かった。
宇治では何故かうさぎがよく見られた。宇治神社にある水を吐くうさぎもそうだし、スターバックス宇治平等院表参道店に行った時にも店員さんがカップにうさぎを描いてくださった。何故口から水が出るのかな、と思ったけど全体的な感想は「可愛い」だった。ジャンプしているようなポーズと実際のうさぎみたいなサイズや足と耳のような細かい部分がよく作られていてすごいだと思った。
第1話で滝先生が行った宇治神社のうさぎ。宇治神社のうさぎ。宇治にはうさぎが特に 多かった。
日本の神社に行ったら狐、牛のようなそれぞれ象徴する動物があって面白い。最近行ったある神社には水を吐く鳩があった。部活のアニメには大会の前に神社で参拝をする場面が多い。聖地巡礼を通じていくつかの神社に行ったことがあるけど、宇治神社はその中でも特に記憶に残ると思う。
第1話で登場したこの場所は、雨が降った時久美子が雨宿りをしていた所でもある。偶然にこの日も雨が降っていたので、すぐ思い出すことができた。うさぎを撮ってから、次の聖地に向かった。最初は宇治神社と宇治上神社が紛らわしくて、どっちも行ってみることにした。すると、両方とも聖地だった。
宇治上神社。日本の一番古い神社建築だと知られているこの神社は、第2期の1話に登場している。鳥居の前で写真を撮っている人が多かった。紅葉もきれいだった。
石碑に「世界文化遺産・宇治上神社」と書かれている。
朝霧橋。漢字が難しいと思った。標識以外にはほとんど同じ風景だった。Googleマップ上のイメージには標識があったけど、なぜか私が行った時にはなかった。
神社から降りてきて道を歩いていたら、橋がいくつか見えた。その中でなぜか目につく橋に近寄ってみると、私が探していた次の聖地、朝霧橋だった。この橋を見て初めて「朝霧」という単語を知った。橋は名前の通り、朝の霧が立ち込めそうなイメージだった。この辺りは川があるからか橋が多かった。なんとなく嵐山で見た景色が思い出された。
朝霧橋の上。ここから見える風景が一番美しかった。橋の色もきれい。
この時間、下校している学生たちをたくさん見かけた。午後の2時ぐらいだったけど、みんな家に帰っていて驚いた。韓国では普通、中学生は3時過ぎてから、高校生は5時ごろに授業が終わるから、いつも日本の学生たちはどんな時間割で生活しているのか気になる。学生のアニメを見ても日本の学校に通っていなかった私にこれはまだミステリーだ。
アニメでは久美子たちが川辺で楽器の練習をしている姿をよく見る。実際に行ってみたところ、宇治は芸術活動がやりやすい環境だと感じた。山と川があって空気もいいし、自然に近いという気持ちになる場所だった。
久美子が通っている北宇治高校は架空のもので、存在しないがモデルになった学校があるという。京都府立莵道高等学校という所で、見かけだけを参考にしたらしい。他にもアニメに登場したマーチングバンド強豪校の立華高校も京都橘高等学校がモデルだという。
京阪宇治駅。JRに乗って来たので残念ながら電車の写真は撮れなかった。久美子たちがこの駅から通学するため、アニメにもよく登場する場所だ。JR宇治駅から宇治橋を渡るとすぐこの駅が見える。アニメを見ながらも変わっているデザインの駅だと思っていたが、実際にもこんな風になっていて不思議だった。人は思ったより少なく、たまに観光客がいた。橋やトンネルに似ていると思った。
京阪宇治駅の中を歩いていたら、このパネルがあった!
ロケ地はあくまでも参考にするだけで、アニメのシーンと全く同じだとは言えない。本当に似ていると思われる場所があると少しずつ違うところが見える場所もある。個人的に聖地巡礼で一番楽しい時は自分が探している所を見つけた時だと思う。このシーンの背景はここだった!という瞬間がある。
韓国はまだアニメーション産業があまり大きくないため、サブカルチャーの聖地巡礼はほとんどできない。日本に来て聖地を巡りながら珍しいと思ったのは、その地域の観光協会と協力して町を聖地に相応しく作り上げるという点だ。「聖地巡礼」という文化を観光事業と地域活性化にうまく取り込んでいるんだと感じた。
京阪宇治駅で見たキャラクターのパネルも、今聖地巡礼をしているということを実感させ、何だか懐かしい気持ちになった。2期が放送されてから3年が経ったのに、まだそこは聖地としてちゃんと残っていた。
この駅はアニメで隅々まで詳しく描写されていて、どこを見てもアニメのシーンに出ている所だった。
ハリーポッターみたいなファンタジー映画は、シーンを再現したテーマパークや映画セットがある。アニメの聖地はファンにとってそういう場所だと言えると思う。『響け!ユーフォニアム』は特に、他の作品に比べて聖地とアニメのシーンが似ている所が多くて聖地巡礼しやすく、まるでその場面に実際に行ったような感じだった。
宇治橋。『響け!ユーフォニアム』の名場面と言える、久美子が泣きながら走る橋が宇治橋だ。
アニメで重要な役割をする宇治橋。この橋は、JR宇治駅と京阪宇治駅の間にある。久美子が「上手くなりたい!」と叫んだあの橋。久美子の声優黒沢ともよが「うまくなりたーいの橋でうまくなりたーいってしてきました。」と、ツイッターに写真と一緒にツイートしたこともある。
こちら側の方が、山が見えてもっときれい。シーンと似ている写真を撮るために向こう側でも撮影した。
JR宇治駅に戻るためにまた宇治橋を渡った。宇治は「橋とうさぎが多い都市」というイメージができた。同じ京都府でもまだ行ったことのない場所がたくさんあると感じた。宇治市も普通の観光として行ったことはないので、また今度は宇治の観光名所とかについて調べてからもう一度行きたいと思った。個人的には夏の宇治を見に行きたい。
京都駅に帰るためにJR宇治駅へ戻ってきた。JR奈良線は意外に料金も安く、席が空いていて楽だった。
久美子の友達、加藤葉月が降りる京阪黄檗駅はJR奈良線で帰りながら通り過ぎた。黄檗駅の名前が珍しいなと思って、記憶に残っていたため、「黄檗駅」というアナウンスにすぐ気づいた。京都駅から宇治駅までは片道が240円で、思ったより安かった。地下鉄烏丸線の今出川駅から京都駅まで行く料金より安い。席も結構空いていて座ることができた。疲れていたため、暖かい電車の中でずっと寝ていた。
ここは祭りの時、葉月と塚本秀一が待ち合わせた場所。川島緑輝と彼女の妹に出会った場所でもある。これはいったい何だろう、と思って調べてみると、郵便ポストだった。下には「この茶壺型ポストは2001年3月23日『宇治市制施行50周年』を記念して設置されました。」と書いてある。
「そして、次の曲が始まるのです。」
『響け!ユーフォニアム』の作家、武田綾乃は京都府宇治市生まれで、同志社大学の文学部に通っていたという。私も作家になるのが夢で、京都アニメーション大賞に応募してみたかったけど、やっぱり日本語で小説を書くのは難しかったので諦めちゃった。でも、こんな格好いい人物が大学の先輩だったという事実に勇気をもらって、私もいろいろ挑戦してみようと思った。
特に、『響け!ユーフォニアム』は部活アニメの中でも現実的な様子を描いていると感じた。勿論、半年ぐらいで強豪校でもなかった学校の吹奏楽部が短期間で全国大会まで行くのは実際には無理かも知れないけど、このアニメの中で人物たちが経験する葛藤や関係は現実にありそうなことだと感じた。この話も作家自身が吹奏楽部での経験を書いたものだという。何か好きなことを情熱的に一所懸命にする高校生たちの演奏が心に響いた。
☀ 留学生であれば、京都市国際交流会館(kokoka)からに演奏会の無料チケットがもらえる機会があるのでぜひ応募してみてほしい。素晴らしい演奏が楽しめる。
『けいおん!』
かきふらいによる4コマ漫画が原作。京都アニメーションによってテレビアニメ化された。放送局はTBS系列各局で、2009年4月より6月まで第1期、2010年4月より9月まで第2期が放送された。
『けいおん!』は京都アニメーションの代表作というイメージがあるほど有名な作品だ。私もバンドや軽音学部で活動したくて、入学後いくつかのサークルに入部してみたが、なぜかずっと続けられなかった。でもライブや練習に参加した経験はあるから、何か馴染みはあった。
『けいおん!』の主な聖地は主人公たちが通っている「桜が丘女子高等学校」のモデルとなった滋賀県の豊郷小学校だが、京都を中心に紹介するのが目的だったため、京都の聖地を調べてみた。主人公、平沢唯たちが登下校している日常の舞台は京都の北白川という所。そこも行ってみたかったけど、今回は京都の代表的な観光地を紹介したかった。それで、『けいおん!』の修学旅行地を主に聖地巡礼することにした。
帰国する時や京都駅に買い物に行った時、いつも見える京都タワー。
京都タワーは京都駅の外に出るとすぐ見える。上にのぼることもできると聞いたが、まだ挑戦したことはない。夜になると明かりがついてきれい。タワーの写真を撮って、次は北野天満宮へ向かった。周りに地下鉄の駅はないけど、バスや嵐電で行ける場所だ。
この辺りに1年も住んでいたのに、中に入ったのは今回が初めて。今年の干支、白いネズミが描いてある大きい絵馬がかかっていた。
留学に来て初めて入った寮が北野白梅町の周辺で、北野天満宮は学校に行く時いつも前を通りかかっていた。今は引っ越しして遠くなったけど、まだまだ歩いて行ける距離。いつも人が混んでいて気になる神社だったけど、実際に入ったのは今回の聖地巡礼が初めてだった。毎月小さい祭りみたいな行事が行われていて、屋台が並んでいるのを見ることができる。
中に入ると、牛の銅像が多かった。北野天満宮を象徴する動物だと思う。学問の神様がいると知られている北野天満宮の牛を撫でると、頭が良くなるという。神社まで行く道は意外と長く、きれいだった。この日もまた観光客が多かった。年末年始には特に人が多いので、訪れるなら日程をよく調整したほういい。
北野天満宮行きのバスも混んでいる場合がよくあるので、今出川駅から歩いて行ったり(40分ぐらいかかる)、嵐電に乗って北野白梅町駅で降りる行き方をおすすめしたい。京都は道を歩きながらいいお店が見つけられるという楽しみがあるので試してみてほしい。
次は金閣寺。北野天満宮からあまり遠くないところに位置している。この前住んでいた寮がこんなに文化財に囲まれているとは知らなかった。平野神社、妙心寺、龍安寺も近くにある。そのため修学旅行に来た学生が多かった。金閣寺は元々有名な場所で、『けいおん!』の聖地巡礼として来る人はあまりいないと思う。でも、『たまこまーけっと』や『響け!ユーフォニアム』の聖地巡礼文にも書いた通り、「聖地」という意味が加わるだけで感想は変わる。
金閣寺。文字通り金の寺だった。冬に雪が降ると美しいという。修学旅行に来た学生たちもたくさん見た。京都アニメーションは背景の作画が特に上手だと感じている。
もし金閣寺を知らない外国人だとしても、『けいおん!』という作品を通じて訪問するきっかけができるかもしれない。北白川も本来は人が少ない観光地だったが、このアニメの聖地巡礼として来る人が多くなったらしい。日本の観光産業はアニメが深く関わっているということが改めて感じられた。特に、京都にある京都アニメーションが会社の周りやこの地域をアニメに登場させることで世界に知らせるこの歩みは文化的な面としても、地域の活性化としても本当にいいことだと思われる。
JEUGIA三条本店。『けいおん!』の主人公たちがよく行く楽器店だ。
続いて、京都市内。軽音学部を扱ったアニメとして欠かせないところ、それは楽器ショップだ。私はバンドに入った時、ずっとボーカルパートだったため、楽器を買う機会はなかったけど、三条にあるJEUGIAには慣れている。この前行った時は『響け!ユーフォニアム』の劇場版ポスターが貼ってあった。やはり京都アニメーションは京都のあちこちに染み込んでいた。
京アニといえば、またすごく関わっている場所がある。それは、MOVIX京都だ。三条にあるこの映画館には、個人的に京アニとの思い出がある。京アニの劇場版の上映は主にMOVIXでやっているし、声優イベントのライブ上映や舞台挨拶も行われている。
MOVIX京都では2019年8月から12月まで京都アニメーション映画作品特集上映会が開催されていた。公式ウェブサイトには「京都アニメーションの皆様が生み出した数多くの素晴らしい作品を映画館の大スクリーンでお客様に観ていただく機会を作りたいと考え、MOVIX京都にて京都アニメーション映画作品の特集上映を企画いたしました。」と書かれている。上映が終わった今、映画館前の電光掲示板には京アニが制作した全ての劇場版ポスターが並んでいる。『けいおん!』はもちろん、『涼宮ハルヒの憂鬱』から『ヴァイオレットエヴァーガーデン』まで、好きなアニメーション会社の作品を同じ所で見られ、本当に印象的な瞬間だった。
三条MOVIX。この日は意外と人が少なかった。隣にはゲームセンターもあって、普段いつも混んでいる。京アニの『Free!』劇場版が上映されていた時、MOVIXに4回も見に行った。アニメでは字は少し違うけど、実際の場所とすごく似ている。アニメではお盆休みに平沢憂と友達の中野梓が一緒に映画を見に行く場所だ。
京都アニメーションが制作した劇場版のポスター。『境界の彼方』、『中二病でも恋がしたい!』などが貼ってある。京アニ作品の聖地巡礼の途中で出会った特別な経験だった。残念ながら京都アニメーション映画作品特集上映会の存在を知らず、上映が終わる12月末ごろに気づいてしまって観覧はできなかった。
「貴重で大切なのはいつもそばにいること」
誰でも自分が住んでいる場所の観光地や名所にはあまり行かなくなる。今回の聖地巡礼をきっかけに意外と周りに関心がなかったことに気づいた。毎日通り過ぎる神社や建物が誰かには旅行の目的地かもしれないし、ユネスコ文化遺産として登録されている意味深い所である場合も少なくない。『けいおん!』の修学旅行エピソードを見て、その後で聖地巡礼に行った時には京都を違う視点から見ることができた。
今回の聖地巡礼は京都アニメーションの作品のロケ地を巡ることで京アニをよく知り、応援するという趣旨で始めたプロジェクトだったけど、その過程で私も感じて、得たことが多い。行きたかったけどなかなか行けなかった場所を訪問する機会があって楽しい経験だった。聖地と共に京都の色んな所の魅力がうまく伝えられたらいいな、と思っている。まだ残っている京都での2年を、もっと大切に過ごしたい。
☀ 京都観光に来たらバス一日券を買うことをおすすめ。京都バスの運賃区間内であれば、1日中何回でも乗車できて、3回以上乗るとお得だ。嵐電も、京都での珍しい経験なので嵐山や四条大宮に行く時には乗ってみてもいい。
『Free!』
京都アニメーション制作のテレビアニメシリーズ。第1期『Free!』が2013年7月から同年9月まで、第2期『Free!-Eternal Summer-』が2014年7月から同年9月まで放送された。第3期『Free!-Dive to the Future-』は2018年7月から同年9月まで放送された。
鳥取県という場所を初めて知ったのは有名な漫画「名探偵コナン」の作家である青山剛昌さんのふるさととしてだった。鳥取の発音が韓国語の「どんぐり」の意味を持つ単語の発音と似ていて記憶に残っている。鳥取県の岩美町は『Free!』ファンの私にとっては最終目的地だった。友達を誘って、鳥取旅行に行ったのは2019年の3月ごろ。ちょうどコラボレーションキャンペーンをしていた時期だった。
鳥取駅まで行く、鳥取エクスプレスバス。
京都駅で鳥取行きのバスに乗った。京都から鳥取までは3時間ぐらいかかる。2泊3日の旅行だったので、時間をセーブするために朝早く、8時30分出発のバスに乗った。バスのほうが電車より安かったため、そっちを選んだ。飛行機で行く方法もあるらしい。
京都に来てから大阪以外の地域に行くのは初めてだったので、緊張していた。バスの外から見える景色は、鳥取に近づくほど自然の風景が美しくなってきた。3時間はやっぱり長い時間だったけど、窓の外を見ていると時間が早く過ぎ去った。普段は見られなかった日本の景色は見慣れないが、綺麗だった。12時30分ごろ、鳥取県の鳥取駅に着いた。
鳥取駅。『Free!』第2期と劇場版に登場した。この駅ではバスと電車に乗れる。
鳥取駅も『Free!』シリーズに登場する場所の一つだ。主人公、七瀬遙の友達松岡凛がオーストラリアから帰国して東京に行く時に向かった駅も、葉月渚がパンを食べているベンチがある所も鳥取駅。
予約したゲストハウスが駅の近くで、近所で昼ご飯を食べ てからチェックインに行った。この日は一番行ってみたかった「イワトビ」のモデル、岩美町に行くことにした。 岩美は電車に乗って20分ぐらいかかる。鳥取は距離によって乗車券の価格の差が大きく、岩美のような近い駅は330円だけど、1時間かかる米子駅は3,220円もする。電車の乗り放題券があるみたいで買おうとしたら、鳥取駅ではなぜか売っていなかったので近い場所だけ行くことになった。調べてみたら、韓国の観光客にしか売ってないパスで、日本現地では購入できないものだった。幸いにも 岩美は安いほうだった。
岩美駅。隣には岩美町観光協会がある。
岩美駅に降りると、コラボレーションキャンペーンを行っ ている岩美町観光協会が見えた。中に入ったらキャラクタ ー商品やコラボグッズも販売していた。3月に誕生日だっ た桐嶋郁弥を祝う掲示板も置いてあった。岩美町に行く観 光客の大体が『Free!』のファンであるため、岩美ではこ の作品に関するイベントがよく開催されていた。キャラク ターの誕生日になるとみんなで集まってパーティーをすると聞いて、やっぱり日本はアニメの影響力がすごいと感じ た。
観光協会の2階では『Free!』の背景地を撮った写真展が行われていた。その後、「Free! × 岩美町」の地図をもらって 聖地巡礼を始めた。京アニのおかげで知って旅行に来たと言える岩美は静かで美しい町だった。久しぶりに見た海も青くてきれいだった。着いた時には雨が降っていたけど、 しばらくして止んだ。歩いている人より車が多くて、まるでアメ リカの風景のようだった。
岩美駅の向こう側にあるお店。中は『Free!』のOSTが流れていて、グッズやぬいぐるみも普通に置いてあった。色々不思議な経験だった。
観光協会にある桐嶋郁弥のお誕生日を祝う掲示板。ファンたちがメモを残している。
浦富海水浴場。遙と真琴の登下校の道だ。
見た瞬間気づいた場所、ここは浦富海水浴場だ。私も友 達も日本の免許を持っておらず、岩美駅から歩いて行った。 確かに近いと言える距離ではなかった。でも周りの風景が素晴らしくて歩きがいがあった。まだ3月で人はあまりいなかった。日本で海水浴場に来たのは初めてだったが、 岩美町の祭りも気になるし、夏になったらまた訪問したいと思った。
荒砂神社。階段の傾斜が急で、怖くなって上までは行けなかった。
スポーツや部活を扱ったアニメには必ずと言っていいほど登場する神社。地域によって神社の名前や、祀る神が違うのが興味深かった。荒砂神社は海の近くにあって、水泳をする遙たちがよく行く神社だから、水と関係があるのかな。おみくじもあるらしいので、今度はやってみたいと思った。
コラボレーションマップと聖地巡礼。楽しかった。歩いて聖地全部を見るのはちょっと無理かも。
鳥取はバスや電車が早くなくなってしまう。残念だが、岩美から少し早い時間に出発することにした。次の旅行では岩美に泊まって、もっとゆっくり聖地巡礼をしたいと思った。
鳥取砂丘。時間も遅かったし、天気もあまりよくなくて暗かった。 でも、砂丘の広い風景はよく見えた。まるで砂漠に来たようだった。
鳥取の観光客はほとんどが砂丘に行くようだ。『Free!』の劇場版『Free!-Take Your Marks-』ではイワトビ水泳部の部員たちが新入部員を集めるための広報映像を作る場所として登場する。最初に行った時は周りが暗く、人も少なかったので次の日にまた訪問することにした。なのに、砂丘から鳥取駅に戻るバスが終わってしまっていて、歩いて帰ろうとしたら遠すぎた。結局、ヒッチハイクしてくれた全然知らない方のおかげで無事に戻ることができた。大変な経験だった。鳥取旅行の時にはバスや電車の時刻表をちゃんと確認したほうがいい。
アニメにはラクダが描かれていたので期待して行ったら、本当に ラクダがいた。お金を払ったら ラクダに乗れるらしいけど、料金も高いしラクダもかわいそうだったのでやめた。
二日目には倉吉と『名探偵コナン』の作家、青山剛昌のふるさと館がある由良に行った。町のあらゆる所にコナンのイラストや銅像があった。ついに旅行の最後となった日、鳥取市を観光してもう一度砂丘へ向かった。鳥取市には映画『るろうに剣心』の撮影地「仁風閣」があった。米子市は『ゲゲゲの鬼太郎』が有名らしい。鳥取県は聖地巡礼の地域みたいだと思った。仁風閣の近所で砂丘行きのバスに乗った。約 15 分後、鳥取砂丘に到着した。砂丘の真ん中まで行く道は誰もいなく て、本当に砂漠にいるような気分だった。その景色は今まで見たものの中で一番素晴らしく、記憶に残っている。
「見たことのない景色、見せてやる。」
『Free!』のキャラクター、松岡凛のセリフだ。鳥取砂丘に行った時、彼のその言葉を何となく思い出した。この作品はなぜか、私の人生に大きな影響を与えてくれた。京都アニメーションという会社を初めて知ったことも、『Free!』のおかげだ。日本語を勉強して、留学を決めたのも全部『Free!』が好きだったため。勿論他の理由もあるけど、フリーの影響が強かった。
それが映画であれ、小説であれ、誰でも自分の人生を変えるような作品に出合えると思う。何かが好き、という感情はそれほど大きいものだと信じている。アニメーションが好きで私は今日本にいる。そして、好きな勉強をするために今年はアメリカに行く。何かに挑戦する勇気を、私はアニメーションからもらった。
この文章がきっかけで、他の誰かにも京都という地域を旅行してみたいという気持ちを持ってほしい。この聖地巡礼のプロジェクトを通じて、色んな所に行って経験したことも、感じたことも多い。忙しいという言い訳で、行かずに通り過ぎてしまう周辺のあらゆる所にもっと関心を持つようにしよう。