日本社会を生きる人々との対話へ
ヒロさん―くだらない理由ですが日本料理のために日本語を勉強します。
ヒロさん―くだらない理由ですが日本料理のために日本語を勉強します。
–僕は4世の日系人です。
ヒロさんはハワイ出身の大学生で、日系4世です。日本には1年間ですが交換留学生としてやってきました。お父さんは日系3世、お母さんはクォーターで両親ともに日本にルーツを持っていますが、両親もお兄さんもお姉さんも家族は誰も日本語が話せません。
-ハワイは日本文化の影響が強いです。ハワイで言うと男の子の日ってBoys dayなんですけど、町にはこいのぼりがありました。実は母と父が離婚していて、今は父とは全然話していません。父と一緒に暮らしてたのは3歳までなので、あんまり覚えてません。家の中でもほんとにたまに和食があるのはあったんですけど、でも何か特に日本のルーツとかは感じていませんでした。
家族との旅行がきっかけで、日本語に興味を持つようになりました。
–大学生になってから家族と一緒に初めて日本に来て、1週間ぐらい旅行しました。東京と京都だけですけど。で、そのときは和食とか日本の料理をたくさん食べて、すごくおいしかったと思いました。で、こんなにおいしい料理が毎日食べれるように(笑)、なりかたったので、日本語を勉強しようと。
大学で薬学を勉強していたヒロさんは大学を辞めてしまいました。
–薬学の勉強を続ける理由がなくなりました。で、大学をやめて2年間ぐらいウェイターとして働いてお金稼いで日本語を勉強し始めました。言語学の本を使って、Dictionary of Japanese elementaryとadvancedとか、文法の辞書みたいなものを見て勉強しました。2年間働いてその間にお金を稼いで貯めたほうが有利じゃないかと思って。ちょっとくだらない理由なんですけど、日本料理が食べたいから、大学に再入学することを目指しました。
日系人とのつながりもなかったので、独学で日本語の勉強を続け、入試を受けました。
–大学の入試で日本語のテストがありました。で、そのテストでいい点数を取ったら初級と中級のレベルを取らなくてもいい。3年のクラスに編入できたら、大学1年と2年の2年間の時間と学費が節約できます。薬学のときの単位もありますので、3年生に入れたら2年間で卒業できる。
無事に3年生として編入することができましたが、それは日本語になじみがあったからかもしれません。
-いちおうハワイに住んでいる人たち、いわゆるローカルの人たちの間で、ハワイピジン英語っていう言語が使われていて、日本語の言葉を普段のスピーチ、日常会話に交ぜます。例えば、英語で言うとソイソースなんですけど、ソイソースの代わりに、みんなは醤油と言います。醤油のほかに、ボチャっていう言葉があるんですが、ボチャっていうのは、シャワーに浴びるっていう意味なんですけど、Go Bochaって言います。語源は、ボチャボチャというオノマトペからの言葉だそうです(笑)。
ハワイピジン英語に影響を与えているのは日本語だけではありません。
-ハワイピジン英語には、さまざまの言葉が混ざってます。19世紀かな、プランテーションという農場で働くために、日本人の移民がたくさん来ました。ハワイに。中国人、韓国人と日本人は、割と最初。だからカルビ、チャースーとかチャウメンとか、そういう料理に関連する言葉が多いですね、大体。
ハワイ語、日本語、英語が話せますが、特に英語はハワイピジン英語とstandardの英語があって使い分けています。
–ハワイピジン英語は、単語は大体ハワイ語と日本語で、もちろん言語のベースは英語ですね。ハワイ人の友達だったらハワイ英語。もし旅行者が来たとしたら、普通の英語ですね。スタンダード(笑)。アメリカの政府は、ハワイピジン英語とスタンダード英語は全く別の言語と認めました。ハワイピジン英語と普通のスタンダード英語に比べたら、どちらかというと、ハワイピジン英語に慣れています。だから、友達とか家族とかと話したら、もちろんハワイピジン英語で、ハワイピジン英語はすごく直接的な感じで、心地いい(笑)感じだと思います。僕から見ると、スタンダードの英語はちょっと冷たい感じが。
日本語で自分の言いたいことを表現するのは大変です。
–頭の中でたまにはハワイピジン英語で考えます。だから、日本語ですごく丁寧な書き方をするときに、ハワイピジン英語は直接的な感じだから、ちょっとじゃまです(笑)。あと、やっぱりいちおう何か自分の言いたいことは英語で言うほうが表現力が全然違います。
日本人とつながるのも難しいです。
–僕から見ると、何か日本人と話すときに相手がほんとに何を考えているのかわからない。建前と本音が強いので、日本人との距離感をどうやって縮めるのか、ちょっと悩んでます。何か、琴とか三味線とか、弦楽部のクラブに入りたかったんですけど、こっちの大学の、何ていう、正式な学生じゃないので、それで、サークルの楽器体験?琴の体験とか三味線の体験とかに参加しましたが、メンバーになれない。あと、何か、留学生が取ってるクラスと、何か、日本人が取ってるクラスが全然違いますので、何ていう、接触する機会が少ない。
それでも日本人学生の友だちができました。
–友達は3人ぐらいです(笑)。僕が住んでるのは外国人の寮なんですけど、何か、一人の日本人が、よく遊びに来るので、友だちになりました。もう1人は、ハワイ大学にいる日本人の友達が、ハワイ大学に留学していた日本人が日本に帰るので、紹介してくれました。
日本では日本人のようにならないといけないと思って我慢しています。
–僕は、日本人のような人にならなければいけないというプレッシャーを感じます。愛媛県に行ったとき、ハワイの文化を愛媛県の学生に伝えるために、さまざまな学校に訪問しました。で、発表させていただきましたが、愛媛県の学校にいる学生たちは、自分の意見をあんまり言わなかったです。それを見て、日本の社会に入り込むために、自己主張をちょっと遠慮して、我慢しています。今も大学にいるとき感じます。いちおう学校は日本社会の一部ですから。
そしての周囲の人に優しく接していけば自分も受けて入れてもらえると思っています。
–日本社会に入るための武器は特にないと思いますが、でも、周りの人を親切に扱ったら、その人たちが僕を受け入れてくれると思います。ですから、優しくするために、日本語の勉強は続けなければいけないと思います。学校の外でする自分の勉強は、人間関係の面で役に立つ。で、学校での日本語の勉強は、仕事の面で役に立つと思います。
将来も日本語の勉強を続けたいし、日本語が使える仕事がしたいです。
–英語と日本語が両方使える仕事をしたいです。できれば翻訳に関係のある仕事したいです。子どもの頃からゲームが好きで、日本で作ったゲームを英語でプレイすると、たぶん英語の翻訳と日本の元のせりふは全然違います。いちおう翻訳じゃなくてローカライゼーションという言葉が使われていますが、翻訳というより英語圏の人たちのための製品を出すために、ゲームのせりふとかを翻訳したいです。
いったん帰国しますが、おいしい料理のためにもやっぱり日本に戻ってきたいです。
–来年の5月卒業します。それから、もしかするとJETプログラムに行くかもしれません。ALT?Assistant Language Teacher?とCIR?Coordinator for International Relationsと何かもう一つSEA?Sports Exchange Advisorでスポーツに関係のある仕事もあります。ハワイにいるほうが楽かもしれませんが、日本語でそういう文化というより、日本のものを味わいたいかな。でも日本に住むのは面白いし、何よりも毎日おいしい料理食べれるし(笑)。
(終わり)